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桐壷をめぐる人々 ~超訳源氏物語「桐壷」~ その十一

⑪若宮の御袴着についての感想

 

※靫負命婦の感嘆

お久しぶりでございます。靫負命婦、ゆげいのみょうぶでございます。先日、桐壷更衣さまの若君様、無事に御袴着(おんはかまぎ)を終えられました。御袴着というのは七五三のことでございますね。

ええ、それはもう本当にご立派でございました。帝が万事取り仕切られまして、盛大に執り行われました。弘徽殿女御さまの一宮様に劣らない華やかなものでございました。儀式そのものも素晴らしかったのですが、それ以上にあの皇子様のご様子が大変にご立派でお美しく、わたくし、感激いたしました。本当に、素晴らしいものでございました。この目で拝見できて光栄に存じます。

 

※弘徽殿女御の講評

ええまあ、帝が取り仕切られたからには、あれくらいの仕上がり具合でないといけませんわね。あの皇子様は、おじいさまがもう亡くなられて後ろ盾がない分、帝が取り仕切られるのは分からない話ではありませんけれど、あそこまで国の宝を私物のように使用してよろしいのかしらね。あれでは周りからの批判は避けられないのではないかしら。まるで次の皇太子はあの皇子だと宣言されたかのようですわ。そんな誤解を招くようなことがあってはならないのですけれど。

とはいえ。

あの皇子様ご自身については、率直に申しまして、あまりの美しさに驚きました。わたくしの皇子も、様子の素晴らしさでは引けを取りませんけれど、あの皇子様の早熟な容貌の美しさは、何といったらいいのかしら…。誰の心をも魅了してしまう類のものですわね。人だけでなく、鬼神でさえも微笑まずにはいられないのではないかしら。わたくしは立場上、あの皇子様を表だって賞賛する訳には参りませんけれど、子どもには何の罪もありませんものね。違う出会い方をしたかったと、そう思わずにはいられませんでしたわ。

 

※公卿たちの反応

「なんやもう、えらい盛大なもんでしたなあ」

「ほんまになあ。目ぇがつぶれるかと思う位のきらきらしさでしたなあ」

「あんさん、目ぇ剥いてはったもんなあ」

「この目ぇは、生まれつきやっちゅうねん」

「へえ、そうでしたかいなあ。まあ、とにかく立派でしたなあ」

「立派にならんとどうします?あんだけ国のお宝使うて、立派にならん方がおかしいわ」

「ほんまやなあ。弘徽殿女御さまのところに引けをとらんっちゅうのが世間の反応やけど、どっちかいうたら、国にひけをとらん右大臣家がすごすぎるっちゅう話やな」

「せやせや」

「せやけどほんま、あんだけ国のもん自分の家の行事に使うてええもんなんやろか?」

「按察使大納言はんがいはらへんからなあ」

「ちょっと、公私混同しすぎちゃうか?…っちゅう、お年寄り方のお声もあるで。知らんけど」

「ますます一の宮さまと、どっちが次の皇太子か分からんようになったっちゅう話もあるな。よう知らんけど」

「まあ、そこら辺の批判は避けられへんやろなあ。駆り出された役人もめっちゃ多かったし。でも、それにしてもやなあ」

「あの皇子様のご立派なこと言うたら!!」

「ないなあ!」

「わし、目ぇ剥いたで」

「生まれつきやないんかい」

「ああ~、わしに、ちょうど歳の頃の合うた娘がおらんのが悔しいなあ。あの皇子様に差し上げたら、さぞかし、なあ~」

「そら、そうなったらええけどなあ~」
「夢やなあ~」

 

※謎の平安女子たちの興奮

 

「見た?見た見た見たっ?」

「見た見た見た見た!!!」

「ねえ~っ!!」

「ねええ~っ!!」

「ちょっとあれ、どうなのよ!」

「素敵すぎるでしょ!何なの、何なのアレっ!!」

「ああ、神よ…!感謝します…!!」

「グッドデザイン…!!神のグッドデザインっ…!!神が私達の息の根を止めにきたのよっ…!!」

「あれだけの国の宝が、すべてあの皇子様の引き立て役だったわ…!!」

「本物よ…!本物のキング&プリンスなのよっ!圧倒的に本物なのよ!」

「一人でキングもプリンスもオールカバー出来ちゃってるのよ!余裕なのよ!」

「ああ…母親の桐壷更衣は嫌いだけど…。子供には何の罪もないんだもの!!」

「今日のこの喜びをもたらしてくれたことには感謝するわ!」

「私たちが、もうちょっと若かったらよかったのに!」

「もうここに、こうして入内しちゃってる時点でアウトよねえ~」

「でも入内してなかったら、あのお姿は拝見できなかったのよねえ~」

「ああ~、ジレンマ!神は残酷だわ…!!」