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桐壷をめぐる人々 ~超訳源氏物語「桐壷」~ その十三

⑬桐壷更衣の葬儀

 

はじめまして。桐壷更衣です。

ああ、やっと楽になって、皆様の前でこうして自分の口から話をすることができて、本当に嬉しい。そうなんです。私はもう、この世のものではありません。今は魂が体から離れて、空気の様にこの辺りを自由に漂っています。漂いながら、ちょうど自分の葬儀を上から眺めていたところです。なんだか不思議で面白いですね。

私の葬儀は、決まり通りに愛宕で火葬されました。わたしの体がそこに運ばれ、葬儀をしている最中に、お母様が泣きながらやってこられたのには驚きました。お母様ったら、見送りの女房たちの車に「私も一緒に煙になる!」なんておっしゃって無理やり乗り込んだりして…。そんなことしたら、女官たちが迷惑するじゃないの、って思ったら案の定。もう本当に、ごめんなさいね。「灰になったのを見たら、桐壷更衣がもう死んだんだって納得したわ」なんておっしゃっていたけれど、親心というのはそんなものだと思って許してあげてくださいね。

そうそう、あれから内裏から使者が来て、私の身分を一段階上げてくださるのですって。これで私は三位になりました。三位以上は女御だと名乗れるので、私は女御の称号を追贈されたということになります。これも帝の温かい思いということになるのでしょうね。

 嬉しくないということはありませんけど、私にはもう、どうでもいいことです。だって、この物語の中でさえ、私は桐壷女御とは呼ばれていないでしょう?死んでから国民栄誉賞をもらっても仕方なくない?って美空ひばりさんなんかが追贈されたときに言われていたそうですけど、本当にそう思います。
 でも、全く意味がないという訳でもないのかもしれません。例えば、私が最後に宮中を退出した時の車ですが、私はあの車を自分の部屋に横付けして乗りました。だって、そうでもしないと無理だったんですもの。でもそんなこと、更衣の身分ではできない事なんです。あれは后レベルの待遇だったから、多分、そのことについてもあれこれ言う人がいると思うんです。でも私が三位になることで、もしかしたら多少の批判はかわせるのかもしれません。それとも、この追贈そのものも批判の対象になるのかしら?まあ、どうあれ私にはもう関係ありません。生きてる人たちに都合がよければ、私はそれでいいんです。

え?最後に私が言いかけたセリフは何だったのか?ですか?

ああ、「こうなることが分かっていたのでしたら…」ですね。うふふ。まあそれは、秘密ということにしておきます。だって、もし正解が「先週のうちに退出しておくんだった」とかだったら、がっかりするでしょう?皆さまの想像にお任せしますから、どうぞ自由にお楽しみくださいね。それにしても、あの時はもう、本当に苦しくて苦しくて辛かった。あの体にはもう、いろんなものが絡みついてのしかかっていて…。これからは自由に、帝や若宮を見守ることにします。