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桐壷をめぐる人々 ~超訳源氏物語「桐壷」~ その三十ニ②

32 弘徽殿の父娘–2

「その点、娘を源氏の君に差し出せば、右大臣家の勢力圏からは抜けられる。源氏の君は帝の全力のバックアップで出世は間違いないし、その源氏の後ろ盾になれば自然と左大臣家も、と」

 

「まあ、そのほうが手っ取り早いわな」

左大臣でのうても、わしでも考えつきそうなこっちゃ。

 

「帝としても、母親のない息子に、実の妹の嫁ぎ先が後ろ盾としてついてくれたらこれ以上の心強いことはない、と」

 

「そういうことでしょうな」

そう言うしかないわな。

 

「まあ、実に合理的な判断と言えますわね。お互いがウィンウィン」

「納得しますんかいな」

「貴族としては、まっとうな思考回路だということです。ただし、左大臣家の栄達は、今上帝の御代の間だけですわね。そのあいだに、どこまで点を稼げるか…?」

「そのとおりです。次の帝はわれらが東宮ですからな。その時はいよいよわれら右大臣家の春」

「そうなったら、我々が源氏の君を厚遇するとでも…?」

「いやあ、それは源氏の君次第というところでしょうなあ…というか、それはほぼ、ない?」

そらそうや、左大臣家の手先になった源氏の君を、冷遇こそすれ厚遇する理由なんぞどこにもないがな。

 

「ですわよね」

ふん、と小さくうなづくと、女御さんは檜扇をまた両手で握りしめた。

 

「それにしても帝…!!そこまであの女の息子がかわいいということなのですわね…!!次の帝たる東宮の、地盤を盤石にしようというお考えはなかったと…!!」

 

「そこや。ほんまにそこが肝ですわ。この話、帝がOK出しはらへんかったらそもそも成立せえへんことや。なんちゅうても、東宮の父親たる帝が、帝ご自身が東宮との縁談をご破算にしたっちゅう、この形がもうなんともなあ!」

ほんま、そこが声には出さへんけど腹立つねん。左大臣家の姫を東宮に、っちゅう話はもう、絶対にこっちが先に言うてんねん!せや、思えば左大臣のやつ、妙にのらりくらりしとったわなあ!なんか変やなて思っててん!!引き入れの大臣て!添い臥しの姫て!ああもうめっちゃむかつく!!