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桐壷をめぐる人々 ~超訳源氏物語「桐壷」~ その三十六②

36 左大臣の長い一日–2

 

 

「源氏の君、どのようなご様子でしたか?」

 

「いやもう、緊張してはるのかねえ。とにかくフレッシュで初々しいですなあ!」
何言うてはるのか分からしませんでした、とはよう言いませんな。

 

「今後、左大臣とは義理の親子となられるわけですが。全力で源氏の君をバックアップすると言ったところでしょうか」

 

「ははは!そうですなあ!そら親子となるからにはこの左大臣、全力で源氏の君を盛り立てて行こうと思ってます」

わしの決意表明です。

 

「あ、すみません右大弁さん?靫負命婦です。後ろにどなたか…」

靫負命婦はんに指摘されて振り返ったら、内侍がめくばせしておった。なんやろ、と思って寄って行ったら「帝がお呼びでございます」やて。おおそうか、それはすぐに参らねばな。わしは右大弁の方に向き直り、我ながらわざとらしいほどの笑みを作って

 

「右大弁さん、えらいすんませんけど、ちょっと帝に呼ばれましたよって、失礼いたします。テレビの前の皆さんも、えらい失礼いたします。本日はどうも、おめでたい事でございます」

 

と言うてその場を離れた。

 

帝の御前に参じると、帝から「今日はご苦労であった」というお言葉があった。恐縮至極というしかない。

 

すっ、と命婦が寄ってきた。手には白い大袿(おおうちぎ)と表衣(うえのきぬ)、下襲(したがさね)、(表袴(うえのはかま)の衣装三点セット、いわゆる御衣一領(おんぞひとくだり)いうやつや。そう、これが帝からの労いの品で、こういう時の慣例の品や。有り難く賜る。

 

「さ」

 

と帝がおっしゃって、酒器を手に取られた。わしはそこにあった盃を取る。

 

「いときなき 初元結ひに長き世を ちぎる心は結びこめつや」

 

わしははっとして帝を見る。いきなりの和歌やけど、こういう風に会話の途中でやりとりするのが平安貴族ですよって(なんやミュージカルみたいですな)、はっとしたのは和歌を投げられたいうことやなしに、その内容です。言うてはるのはつまり

 

「幼い源氏の初めての元結いの時には、これからそなたの娘との末永い幸せを約束するという気持ちをこめて結んだのか?」

 

ということや。