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桐壷をめぐる人々 ~超訳源氏物語「桐壷」~ その三十五③

 

35 光源氏の元服中継 宴編–3

 

それではここで、会場全体の様子をお伝えしたいと思います。カメラさん、御前から階段、そして前庭の様子が映せますでしょうか…?はい、ありがとうございます。

ご覧いただいておりますように、帝のおわしますところには、折櫃物(おりびつもの)と呼ばれる小箱が置いてあります。薄いヒノキを曲げて、作ってあるものです。中には肴やお菓子が入ることが一般的で、おそらくあの中にも何らかの食べ物が入っていると思われます。その横には籠物(こもの)と呼ばれる果物が入った、木の枝につけられた籠がありますが、これらは、源氏の君からの今日の儀式に対する帝へのお礼の品、返礼品ということです。そしてこれを用意したのは誰あろう右大弁さんと伺っております。右大弁さん、そうなんでしょうか?

 

あ、はい、え~、そうですね。私が承りまして、手配させていただきました。

 

母方の実家のない源氏の君の親代わりとして、これまで後見役を担ってきた右大弁さん、この仕事には感慨深いものがあるかと思いますが?

 

はい、そうですね…。これからは左大臣がその役をなさるということで、私としましては肩の荷が降りてホッとしたというか、すこし寂しいような、そんな複雑な気持ちもいたします。

これが後見役最後の仕事となるのでしょうか?

 

おそらくそうなるかと思います。ですので、精いっぱい務めさせていただきました。

 

返礼品の中身はなんでしょうか?

 

折櫃物の方は、お料理でして、籠物の方には柑、橘、栗、柿、梨の五種類の果物が入っております。

 

右大弁さんの源氏の君への思いの籠った、センスあふれる献上品ですね!

 

ありがとうございます。そういってもらえると、気合を入れた甲斐がありました。

 

そして…その周りにある、所狭しと並んでいるもの、レポートして貰えますでしょうか?

 

はい、それらは屯食(とんじき)と、足の着いた箱は禄の唐櫃ですね。屯食というのは21世紀では「おにぎり」と呼ばれているようです。これは日本人のソウルフード、おにぎりの原型と言っていいのかもしれません。おこわを握ってあります。禄の唐櫃は中に帝から我々に下賜される物が入っているものです。屯食とともに、帝から我々への贈り物、ということになります。

 

それにしても、たくさんありますね。

 

本当に、足の踏み場もない程です。

 

先年の東宮のご元服の折でさえ、これほど多くはなかったように思いますが?

 

ああ…ええと…靫負命婦さん、少々感想が率直過ぎるように思いますが…ええ。

 

失礼しました。実際のところはよくわからないながら、そのような印象さえ受けてしまう、それほどたくさんの物が置いてある、という事でよろしくお願いします。