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桐壷をめぐる人々 ~超訳源氏物語「桐壷」~ その三十六①

36 左大臣の長い一日–1

 

今日は源氏の君の元服の日。今は元服の儀式が終わって、ぼちぼち宴が始まろかっちゅう頃合いですな。わしはちょっと休んでからの、宴の会場に向かってるところです。

 

しかし源氏の君の儀式は素晴らしかった。中継、見てもらえましたやろか?わしはここで、源氏の君の引き入れの大臣としての役目を賜っておったのですが、気づいておられましたかな。

 

この役目、簡単にいうたら、源氏の君に、大人になった証拠である冠を初めてかぶせる役やけど、これは世の中に「これからはこの左大臣が源氏の君の後見役になります」て公言するようなもんやから、まあ緊張しましたなあ。至近距離から見る源氏の君はもう、ほんまにご立派でした。これからこの公達を我が家にお迎えできるんやと思うと嬉しゅうてなりませんな。

 

さあさ、会場に着きました。源氏の君はどこにいはりますかな?おや、あんな端におられますんかいな。初々しいもんですなあ。

 

「源氏の君、本日はおめでとうさんでございます」

わしは源氏の君のそばに行き、声をかけた。

「…ありがとうございます」

かわいい。精いっぱいなところが実によろしいですな。

「今日はお疲れやと思いますけど、この宴の後は、我が家にて姫がお待ちしております。これからは義理とはいえ親子。どうぞ末永くよろしくお願いいたしますよ。孫の顔が見られる日を楽しみにしておりますよってな」
「…〇×3※▽%#”&」

「は~っはっは!それでは、またあとで」

源氏の君、顔を赤らめて下を向いてしまわはった。何を言うてたんか全く聞こえんかったけど、まあよろしいやろ。今日は「初々しい」ですべてOKや。

 

「左大臣、左大臣!本日はおめでとうございます!少しお言葉、頂けますでしょうか?」

 

上座に向かってたら突然声をかけられて、明かりがぬっと顔に近づけられた。

 

「え?なんや中継?ああはいはいご苦労さんです」

そうか、ここにも中継入ってたんかいな。気合入っとるな。しかし右大弁、こんな仕事もしとるんかいな。

 

「左大臣、先ほどは見事に大役を果たされましたね」

 

右大弁はこなれた風にインタビューしてきよる。わしもヒーローインタビュー風に頑張りましょ。

 

「はあ~、ほんまに緊張しましたけど、なんとか。ホッとしております。わしも源氏の君も一世一代の晴れ姿っちゅうことでね、ほんまに無事にお役目を果たせてうれしゅう思ってます」

 

これは本心やね。

 

「先ほどあちらで源氏の君にお声をかけておられましたが」

 

「ああ~。まあ、なんちゅうか、ご苦労さんっちゅうかね、そんな労いの挨拶をね」

 

まあ適当にぼかして返事しとこ。