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桐壷をめぐる人々 ~超訳源氏物語「桐壷」~ その三十七

37 光源氏

 

あの日の僕がどうだったか、藤壺様にお会いして聞いてみたいのに、いまだにそれができていないのは辛い。

 

僕は元服した。儀式の晩に左大臣の家に行って、そこの姫君と結婚した。元服と結婚はセットらしいから別にいいけど、左大臣家の姫はイマイチだ。

 

顔は悪くない。自分が年上だからと気にしてるらしいけど、別にそこは気にしてない。僕は年上は嫌いじゃないんだ。でもなんというか…大事に育てられた人、というのは分かるけどそれだけ。特に僕の興味を惹くほどのことはなかった。左大臣は本当に色々心を砕いてお世話してくださるんだけど、これはどうしようもない。

 

まあでも、帝が僕をずっとそばにお召しになるから、左大臣邸に行くこともあんまりないし、そこはちょっと気楽。内裏ではお母さまが住んでいらしたという桐壺を、使用人も当時のまま使ってる。母に似ているという藤壺様。僕はこれまでと変わらずにここで生活していけるかと思っていたのに。

 

そう、僕は大人になってしまった。大人になってしまったんだ。だからもう、藤壺様の前に行っても、御簾の中には入れていただけない。直接あのお顔を拝見できないんだ!それどころか御簾ごしでさえ、以前のように気楽には会っていただけないんだ。

 

僕にできることは折々の管弦の遊びの時に、遠くから藤壺様の様子を伺い見るだけ。楽器の音色がしたら近くまで寄っていって、かすかな話し声を漏れ聞くだけ。でもその声が聞こえるだけ、左大臣邸よりはましだ。

 

そうそう、お母さまの実家は、父帝が素晴らしく改築なさったよ。子供のころにおばあさまと住んでいた時よりは格段にきれいになったし、池も大きくなったらしい。あの素晴らしい家に僕は、理想の女性、藤壺様と住んでみたいのに。

 

ああ、僕はどうして左大臣の姫君と結婚なんかしたんだろう。藤壺様。あのような女性とこそ、僕は結婚したい。あれほどまでに素敵な方はこの世にはいない。左大臣の姫君が藤壺様のような人だったらどんなに良かっただろう。藤壺様、藤壺様にお会いしたい。今の僕の願いはただそれだけ。