kunijima

くにじま

柴島と書いて「くにじま」と読む。大阪の地名であり阪急千里線の駅名。
駅名としては全国レベルの難読駅名らしい。

なぜ柴島と書いてくにじまと読むのか?というのを調べてみたけど、結局ただのこじつけでしかない事が判明。柴島という字面を見てから正解の「くにじま」と口が読むまで、全く取り付く島がないという感じがする。この点では同じ大阪の難読駅名でも「放出」と書いて「はなてん」の方がまだ良心的だと思えてしまう。

とはいえ、固有名詞は尊重するのが私の掟なので、「柴島はくにじま」と自分に言い聞かせた。
が、どこでバグったものかこれを「ともじま」とインプットしてしまったのである。

そして次の段階として「柴島はともじまとは読まないけど、正解はなんだっけ?」という、自分としてはひどく居心地悪い状態が長く続いた。

それが昨日、久しぶりに千里線に乗って柴島駅に停まった。これは千載一遇のチャンスとばかりに「柴島はくにじま」と記憶の上書きを試みたのである。

アナウンスが「次は柴島」と言った時から、一緒にいた娘に協力を頼んだ。
娘はスマホで「柴島」という字を出して、何度も「これは何て読む?」と聞いてくれた。私はその度に「ともじま」とか「くにじま」とかしどろもどろで答えていた。

いよいよ電車が減速し、柴島駅に入る。
私は子供のように窓の外に顔を向けて「柴島」「くにじま」という駅の表示を探した。
口でも呪文のように「くにじまくにじまくにじま」と唱える。そうしながら「くにじま」と書いた駅名表示を見たら、絵として「くにじま」と覚えるに違いないと思ったのだ。これぞエピソード記憶と言うやつだ。

しかし肝心の駅名表示がなかなか見つからない。くにじまくにじま。
電車が止まる。くにじまくにじま。目が「くにじま」という4文字を探して空間をさまよう。

「あ、あった!!」
私の目が、濃いピンクの背景に白く抜かれた丸ゴシックの看板にくぎ付けになった。しかしそこにあった4文字は
「なかじま〇○」であった。
「ふわ!なかじまぁ~?!」
やばい、ここでなかじまを入れるのはやめてくれ~!!しかも背景の色が強烈すぎる。うっかり覚えてしまうじゃないか~!!

ともじま
くにじま
なかじま

さてどれでしょう?!わかりませ~ん!!
「お母さん、そこにあるよ!」
娘が助け船を出してくれた。斜め後ろに濃紺の地に白で「柴島」と「くにじま」とが一緒に書いてある看板があった。
私はそれを凝視しながら、電車が発車するまで「くにじまくにじま」と唱え続けた。

おかげさまで何とか柴島はくにじまだと覚えることが出来た。
しかし、まだたまに、ピンクの看板の「なかじま」が頭にちらつく。

帰りにもう一度柴島駅を通るので、その時にしっかり復習して「ピンクのなかじま」を消してしまおうと思っていたのだが、その目論見は、日暮れのためあっさり崩れた。サスペンデッドは、なしである。