10月の連休に、思い立って伊勢に行ってきた。
式年遷宮の年ほどでもないが、相変わらずすごい混雑だった。
伊勢神宮に参拝して、さてどこかでお昼ご飯でも、と思ったが、参道は人でごった返しており、飲食店はどこも長蛇の列。
あの列の最後尾に付くか?と考えてはみるが、そうしてありついた食事は、どこかせわしない感じがして気が進まない。
私達一行は、特にあてがあるわけでもなく、ただただ人のいない方、いない方にぶらぶら歩いて行った。
と、もうすぐ参道の終わりが見えてきたあたり、もうだいぶ人も少なくなったところに、スッキリした朱と生成りの暖簾のかかった「まめや」というお店を見つけた。
一見して飲食店だとは見えないが、看板には「農村のお昼ごはん」と書いてあり、ひりょうず膳、あげ焼き膳、鮎そうめん膳、大豆と野菜の田舎カレーという文字が躍っていた。
何より行列がないのを見て、私たちは「ここにしよう!」と言い合って中に入った。
中はすごく立派な、古い商家といった風情で、お座敷に低いテーブルとイスが置いてあった。
広々としていて、落ち着いた部屋の中を、自然の風が通り抜けてとても気持ちがいい。

私達はそれぞれ、あげ焼き膳、カレー、ひりょうず膳を頼んだ。
料理が運ばれてきた瞬間、みそ汁のいい匂いに驚いて「うわ~」と声をあげてしまった。
みそ汁というのは、遠くからでもこんなにいい匂いがするものんだとまず感動。

期待に胸を高まらせながらいざ。
「めちゃくちゃ美味しい」
私はしばらく、それしか言わなかったような気がする。
白和え、いり豆、かぼちゃやとうがんの含め煮。
お肉を使っていないメニューにありがちな物足りなさは、全くない。
どれも、しっかりとした味がする。
でもそれは調味料の味ではなく、最後はすべての料理が、素材そのものの味わいを口の中に残して消えていくのだ。
熱いものは熱く、冷たいものは冷たく。
焼いたあげは、表面はかりっと、中はふわっと。
そしてみそ汁。塩辛いわけでも水っぽいわけでもなく、本当に贅沢な味。
これまで味噌汁の匂いと言うのをあまり感じたことがなかったのだが、それは私の鼻がもうそれに慣れているからだと思っていた。
しかし、これはしっかりとした味噌のいい匂いがする。きっと本来の味噌汁というのはこういう物なのだろう。
変な話、「この味噌汁は、外国人はダメかもしれない」って思ったくらいだ。
仕上げは沢庵。茶色かった。しかしこれが、自然なうまみが凝縮していて、いくらでも食べていられる。
これまで私が食べていた沢庵とは一体なんなのか?と思えるほどの、「まっとうな」味がした。
娘の頼んだカレーは、味にとんがったところが全くなく、薬膳の風味さえまとった、体にやさしいカレーだと感じた。
とろみはおからか、大豆のペーストで出している感じだ。
野菜のかき揚げがカツカレーのカツのように乗っていたが、これがまた、玉ねぎやさつまいもの味が、噛むほどにしっかり味わえるもので、カレーはもとより、何もつけずにこのまま食べたい!という一品であった。もちろん、サクサクである。
昔の人は、当たり前にこんなものを食べていたのかなあ。そんなことを言い合いながら、美味しいおいしいと言って食べ終わった。
料理の美味しさにすっかり感動した私は、ここだったら間違いないだろうと思い、デザートを追加注文。
コーヒーと、おからドーナツ。
これが…!!
絶品であった!!!
古い和食器にサーブされて出てきたコーヒーは、はっきり言って、これまで飲んだどのコーヒーより私好みであった。
私は実は、自分で手淹れしたコーヒーの味が気に入っているのだが、しかしこのコーヒーには白旗を上げる。
雑味がない。
とがった苦味もない。
深いけど、丸みのある味わい。一体感…。
どうやれば、この味になるのだろう…?
感動した。
そうしてこの感動を超えるのが、ドーナツであった。

外はカリッと、中はふんわり。
好みで黒蜜ときな粉をかけて食べるのだが、そうすると、優しい味わいにしっかりしたコクが加わって、本当においしい。
さらに、添えられていた豆乳に、私たちは驚愕した。
なにこれ…?!
と夫は小さく叫んだ。
私も一口飲んで、驚いた。今までの豆乳は一体なんだったのか?!
飲んだ瞬間は、市販の物とそんなに変わらない感じがする。
しかし、その次の瞬間、グッと豆の甘みが来るのだ。
おっ?と驚きつつ飲み込むと、鼻から抜ける後味の風味はまさに…
「枝豆!!」
そうそう、枝豆ジュースだよこれ!!
と私たちは興奮して言い合った。
我が家はみんな、豆乳は好きじゃないのである。
しかし、この豆乳は、市販の豆乳のような水っぽさや青臭さが微塵もないあるのは甘みとコクと、驚きだった。
「俺、豆乳は嫌いだけど、もし世の中の豆乳が全部これだったら、豆乳飲むね」
家族一の豆乳嫌いをしてこう言わしめた逸品。それも単品メニューじゃない所が憎い。憎すぎる。
食事を終えて感じたことは
野菜や豆の、素材の力というのはここまで力強いものなのか、という感嘆であった。
お店は空いていた。でもきっと、それでお店の側もいいと思っている感じがした。
ドーナツを頼んでから出てくるまではちょっと時間がかかった。
でも、その理由が分かる仕上がりであった。
とにかく丁寧に、正直に、作ってある料理達であった。回転率とか原価率とか、そういうのとは無縁な気がするお店の姿勢を感じた。
お店を出た時、「あ~美味しかった」ではなく「あ~気持ちよかった」と言っていた。
この店に行けただけでも、伊勢に来た甲斐があったとさえ思える出会いであった。
この店は、土日祝しかやってないそうである。普段は勢和多気ICの近くでバイキングレストランをやっているらしい。
いつかきっと、こちらにも行ってみたい。
せいわの里まめや
http://www.ma.mctv.ne.jp/~mameya/
おかげ横丁まめや