靴下は、白、黒、紺色の無地のものとする。ワンポイントは可。
これが、娘の中学校の靴下に関する校則である。制服を注文するときに靴下もリストにあったので、まあとりあえずそれを頼めば間違いないだろうと思って注文しておいた。
それは白いリブの、ちょっと長めのソックスだった。これがいわゆる「スクールソックス」というものらしい。
私が女子中学生だった頃は、いくら校則的にOKでも上級生的にはアウトなルールがいくつかあったりした。例えばこの靴下の例で言うと、一年生が履けるのは白の無地のみで、ワンポイントの模様のついた黒いソックスだと先輩から呼び出しを食らう、というような事だ。こういう事は明文化されてないのに厳然と学校内で機能しているので、入学前の情報収集は必須だ。わが家のように一人っ子で、周りに親戚などもない情報弱者の家庭は特に注意が必要なのである。といっても、やたら注意しているのは元女子中学生の私だけであって、本人は至ってのんきなものである。のんきだからこそ、私が注意してやらねば、と思うのであるが。
それでもまあ、学校指定業者が売っている白無地の靴下ならその辺も問題ないだろう、と思って学校指定の白を履いて入学式に臨んだ。
ところがいざ式に出席してみると、新入生の半分くらいは白ではなかった。「入学式は白やろ! 業者から買ったの履くよ」と言っていた娘の友達も黒を履いて、目の前を誇らしげに歩いて入場しているではないか。お、おおお~??
そうして、私の座る保護者席の前にいる上級生たちの足元を観察すると、確かに白と黒と紺という色合いではあったが、長さも質感も千差万別であった。メッシュ、レース、スニーカーソックスにハイソックス。なるほど、私の心配は杞憂に終わったのだな、と納得する。
娘は服装については頓着しないので、別にこれでいいよと言うのであるが、私の方がなぜだか白は黒よりダサいような気がして、間もなく何足か黒の、しかもワンポイント付きの靴下を買い足した。なぜ白より黒の方がいいのか、自分でもよく分からないなあ、と思いながらの買い物であった。
GWがあけ、気温が上がってくると、娘が言い出した。言いだすだろうなと思ったタイミングで言い出した。
「靴下が長くて暑いから、短いの買って」
だよな~と思いながら「はいはい」と返事をする。おそらく欲しがっているのはスニーカータイプの靴下だろうと思って聞くと、やっぱりそうだった。友達が履いているのがカッコいいから買ってくれと言っているのではない。単純に学校指定のスクールソックスが長くて暑苦しいのだ。本当に機能性のみの娘である。
そんな靴下を履いていいのかと一瞬思ったが、確かに校則には色と柄の指定はあったが、長さの指定はない。私の方も入学式でスニーカーソックスの生徒を見ているので、それを履くと先輩に目をつけられたりしないかという心配もない。
そうして週末、靴下を買いに出かけた。黒か白か紺で、無地かワンポイントの、スニーカーソックス。
ない。
ないのだ。なぜ?!という思いが私と娘を襲う。あるのはスクールソックスか、沢山柄のついた、かわいらしいスニーカーソックスなのである。柄はいいから。無地でいいから。もうワンポイントとか言わないから。
ワンポイントって、この甲のところに全面的に書いてあるパンダの顔はダメかな? 一個だからワンポイントだけど?って苦し紛れに娘に提案したら、あっさり「ダメでしょ」と言われた。真面目だ。
何とか無地に近いスニーカーソックスを探し回ったが、やはりないものはない。一つだけ、欲しいものよりずいぶん薄手の、ストッキングに近いような物があったので、それにしようか、と言っていた時、私はピカッとひらめいた。
そうだ、メンズを見てみよう!!
そうか、と娘も言う。言いながら、さっさと歩きだした私の後を付いてくる。果たして紳士肌着売り場に行くとあっさり、想定していた靴下が見つかった。無地のスニーカーソックス。白と黒が置いてあった。
そうそう、そうそうそうそう。
これこれ、これこれこれこれ。
3足組で380円。即決である。
どうしてこれが、婦人売り場にないのだろう?サイズも24~26センチで、婦人物にないサイズではない。なのに、3足を束ねている紙のラベルにはデカデカと「メンズソックス」と書いてあるのだ。
スニーカーソックスはメンズ専用か?
無地の靴下はメンズ専用なのか?
女子だって無地の靴下履きたい時があるのである! 「メンズソックス」があるなら「レディースソックス」があってもいいじゃないか。いや、中身は同じ物でもいい、ラベルだけ変えて、婦人売場にも置いてくれないだろうか? 買いにくくて仕方がない。
むむぅ、と「メンズソックス」を睨んで唸る私に、娘が軽く「ま、いいじゃん、履けば分かんないんだしさ」と言う。まあそりゃそうだ。これがメンズだからと言って、この場で買わない理由はない。買うのは買うのだ。
で、白と黒、どっちがいい?と私が聞くと、娘は即「どっちでもいいよ」と答えた。何も考えていない。メンズだろうがレディースだろうが、白だろうが黒だろうが、娘はただ「短い靴下」があればいいのだ。
娘に対して、私はなぜだかファッション性を考えてしまう。ここでもやはり、絶対黒じゃないとカッコ悪い、という気がして「じゃあ黒ね」と、メンズソックスの黒を一組、かごに入れてレジに向かって歩きはじめた。
後ろから、娘の「そうだね、黒の方が汚れが目立たなくていいよね」という声が聞こえた。どこまでも機能優先の娘である。