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効果と手抜きの果てのコスパ

故あって、エステに行った。

サロンに着くと、まずはカウンセリングを受ける。シミ、しわ、乾燥、肌で気になるところはないか、などなど。

 

そして聞かれる。基礎化粧品は何をお使いですか?と。

 

う、と詰まる私。なぜなら答えは

 

無印良品の化粧水とニベア。以上。

 

だからである。エステなんていう、美容意識レベル最高ランクの場所に来ていながらこのアイテムの少なさといったらどうだ。何も手入れしてない感満載である。庭で言ったら草ボーボーの荒れ放題といった感じである。

 

化粧水はいいとして、ニベアは確かにスキンケアクリーム、と銘打ってあり、顔にも使えるとうたってはいるものの、一般的にはハンドクリームの認識ではなかろうか。実際お店でもハンドクリームの売り場に置いてあるくらいなので、これを基礎化粧品と言っていいのかとさえ思うが、実際のところそういう使い方をしているので仕方がない。私は嘘はつけない正直者なのである。いや実は、ここは黙っておこうかと思ったが、基礎化粧品が化粧水だけというのもいかがなものかと思ってしまい、保湿クリームは使っているんです、というアピールのために言ってしまった、というのが正しいかもしれない。どうでもいいが。

 

ともあれ、花とキラキラした道具といいにおいに満ち溢れた明るいサロンで、いかにも何も手入れしてない、頭からセイタカアワダチソウが生えているような回答をするのは申し訳なくて、ここのあたりは言葉の前後に「すみません」を連発していた。いやもう、ほんとこの期に及んで私、何しに来たよ?と思った。

 

ちなみに、これまで使った基礎化粧品で合わなかったものはありますか?と聞かれた時にはやけに胸を張って「はいっ、S〇=Ⅱの化粧水はダメでした!」と答えた。このシリーズ、他のアイテムは良かったけど、世に名品と名高い化粧水だけは、大勢のハイヒールを履いた極小の小人が顔の上で一斉にタップダンスを踊っているようなむず痒さがあって私には合わなかった。そう、私だって一応は、やるときはやっていたのである。

 

そんなこんなで、無事にエステ終了。

 

帰り道、つらつらと考えた。一時はデパートまで基礎化粧品を買いに行っていた自分が、なぜ今はこのやり方なんだろうか、と。自分の基礎化粧品ヒストリーを紐解くひととき。

 

若いころ、独身の頃はまあ、暇もお金も割と自由があった。自分の手入れをすることはこの時期は半ば義務のような側面もあって高い化粧品を、時間を使って手入れしていたように思う。それが楽しくもあった。顔の上で小人が踊ったのはこのころのことである。

 

ところが、それが強制的にひっくり返ったのが出産である。

 

子供が生まれた瞬間から、自分のためだけの時間など一瞬もない。睡眠は夜泣きで邪魔をされ、トイレも隙をついて済ませる勢いだ。お風呂に至ってはもう、ワンオペの時には自分の体をタオルで拭く事さえ後回しで、気が付いたら湯冷めしている。というか気化熱で入る前より体が冷えている。

そんな生活で、自分の肌の手入れの優先順位は地に落ちる。本当に落ちるところまで落ちていくのだ。

 

とにかく、自分の手入れはわざわざやるのではなく、作業のついでに、流れの中でやってしまいたい。そう思うようになるし、実際そうしかできなかった。なので、以前はお風呂の前に丁寧にコットンやら綿棒やら使って落としていたメイクも、そもそもメイクそのものも最低限になるが、それでも、お風呂の中で、体を洗う流れでやってしまうようになる。クレンジングはお風呂で、濡れた手で使えるものしか買わなくなるし、最終、クレンジングさえ省いて洗顔フォーム、なんなら石鹸でぶわ~っと顔からつま先まで一気に洗うようになっていったのだった。

 

当然、風呂上がりの顔は乾燥して突っ張りまくっている。しかしそこで化粧水をはたくタイミングがあるかどうかは分からない。ほんのちょっと、最低限の身支度を整えているうちに向こうの方で子供の泣く声が上がることなど日常茶飯事なのである。

 

こうなるともう、ゆっくり座って、あれこれ化粧品を肌になじませる、なんて悠長なことはやっていられない。立ったまま、歩きながら、バババッと化粧水を顔に広げて、それが乾かないようにクリームを塗る。そしてそれらのアイテムはいつでもどこででもぱっと買える、効果が確かでお値段もお手軽な定番ものになっていくのだ(当時は無印良品の基礎化粧品はコンビニで買えた)。そうして行きついたのが、無印とニベアなのである。そうだ、これらは私的には珠玉の2品なのだった。

 

さて。

 

今現在私は、まかり間違ってエステなどに行ってしまえるような、自由な時間を持てるようになった。子供は大きくなったのだ。でも、手入れの仕方は緊急時と変わりない。なぜか?と考える。

 

デパートの化粧品を駆使していた頃の、肌の手入れへの注力を10割としよう。

そしてその頃の手入れの効果も10割としよう。

 

出産後の注力は、ゼロ、いいところ1割。

そしてその効果は6割くらいまでダウンした、というのが実感だ。

 

あれ?

 

9割手抜きして、結果4割しか落ちないの?

 

それ、合格じゃない?アリじゃない?

 

おそらく私は無意識にそう思ったのに違いない。省いた手間ほど効果が落ちないなら、それよくない?コスパ、よくない??じゃあこれで、もうちょっと丁寧にやったらいいだけじゃない??ていうかもう、10割の効果はそんな、必要じゃないし。

 

そんな思いがあってきっと、今に至っているのだ。周りのママ友に聞いてみたところ、やっぱりクレンジングはお風呂で使えるものしか買わないという。だよね、その辺はもう戻れないよね。

 

そんなこんなで、まあ今のやり方でいいかと割と自信をもって、肌の手入れをするようになった。ただ、エステで使っていた基礎化粧品の量を学んで、化粧水は一度に、これまでの倍の量を使うようになった。そして新たに乳液も使うようになった。顔は洗顔フォームを、泡立てネットで泡立てて洗うようにもなった。なんだかんだエステで乙女心が刺激され、やっぱりセイタカアワダチソウくらいは駆除しておきたいと思ったのである。

 

手間と効果のバランス。そしてアイテムの値段。肌の手入れすらも、やっぱりコスパが大事なのである。