「徒花(あだばな)」という言葉について調べていた。自分としては「無駄に咲く花」としか思ってなかったが、調べてみると桜のことを指す言葉でもあるらしい
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桜は無駄な花なのか、と驚き半分、納得半分といったところだ。確かに、花は実をつけるために咲くものと考えれば、実をつけない桜は徒花ということになろう。
桜は実をつけない、というか、日本人が愛する桜は、そのように作られている。種ができないから接ぎ木でしか増えないし、考えてみれば、子孫を残すことこそに存在意義がある自然界においては、確かにいびつな存在と言えなくもない。
しかし、私たちは実をつけず、一年のうちほんの一週間か10日ほど咲く花を観賞するためだけにある桜を「ムダ」とは思わない。春が近づくとやれ開花予想だ開花宣言だと、人々の心を煽り、咲いたら咲いたでやれ雨が、やれ風がと気持ちの安らぐ時がない。
桜は確かに実をつけないが、その美しさで圧倒的な効力をもつ。それは誰もが認めることだろう。桜はその花そのものがすでに「実」なのである。
一方、実際に実をつける桜もある。その果実を私たちは「さくらんぼ」と呼ぶ。
ソメイヨシノのような、枝もたわわに咲く桜の花ひとつひとつに、そのあと佐藤錦が実ったなら、それは確かにすごいと思うが、農業の素人である私でさえ「さすがにそれは」と思う。実を得ようと思ったら、多分、摘花なんかするのではないだろうか。
つまり、花も実も、というのは自然界では無理なのだと思う。ソメイヨシノも佐藤錦も、実か花か、一方に特化しているからこそ、ここまで人の心をとらえるのではないだろうか。とがっているから、人に喜んでもらえる。
なのに、人、特に女性はどうか。
美人で仕事もできて、人柄もいい。なのに子供がいないと「女として失格」ってなんだ?神ならぬ身で、そこまで求められるいわれはないじゃないか。
美しさで人を魅了する、素晴らしい。
子だくさん、素晴らしい。
仕事で社会に貢献する、素晴らしい。
人それぞれ、自分の強みを活かして世の中に貢献すればいいのだ。子供がいないということ一点を持って、自信を失うことなど微塵もない。
花粉のない桜の花を見ながら、そんなことを思った。やっぱり、徒花なんてないなと。